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2017年9月15日金曜日

三学会合同サーベイランス(呼吸器感染症2012)・J Infect Chemother


Yanagihara K, Watanabe A, et al. Nationwide surveillance of bacterial respiratory pathogens conducted by the surveillance committee of Japanese Society of Chemotherapy, the Japanese Association for Infectious Diseases, and the Japanese Society for Clinical Microbiology in 2012: General view of the pathogens' antibacterial susceptibilityJ Infect Chemother. 23 (9):587-597, 2017. (リンク


 日本化学療法学会、日本感染症学会、日本臨床微生物学会の三学会合同抗菌薬感受性サーベイランスが行われていますが、そのなかの一つに呼吸器感染症のサーベイランスがあり、当教室の栁原 克紀 教授も調整委員として重要な役割を担っています。

 今回、2012年に行われた呼吸器感染症サーベイランスの結果が、原著論文として日本感染症学会・日本化学療法学会の英文誌であるJournal of Infection and Chemotherapy誌に掲載されました(2017年9月付)。この論文では、栁原 教授が責任著者(corresponding author)および筆頭著者、賀来 敬仁 助教が共著者となっています。
 
 2012年の検討では、35の医療施設から合計1236の菌株が収集され、S. aureus(232株)、肺炎球菌(225株)、溶連菌(16株)、インフルエンザ菌(231株)、Moraxella catarrhalis(147株)、肺炎桿菌(167株)、緑膿菌(218株)の菌種毎に薬剤感受性試験の結果が解析されています。また、肺炎桿菌におけるESBL産生菌の割合や緑膿菌におけるメタロβラクタマーゼ産生菌の割合についても検討を行っています。本論文と同じく栁原 教授が責任著者(corresponding author)および筆頭著者で森永 芳智 助教が共著者として報告している2010年のサーベイランス結果(リンク)と比較して、薬剤耐性菌の割合に大きな変化はありませんでしたが、今後もこのようなサーベイランスを継続して行っていくことが重要であると考えられます。

 当教室には、感染症および呼吸器を専門とする医師が所属しています。今後も、栁原 教授を中心に、微生物検査室および感染症関連の教官(森永 助教小佐井 助教賀来 助教)も全国的なサーベイランスに貢献していきます。

 これまでにブログで紹介した論文一覧はこちら→リンク

2017年9月14日木曜日

臨床検査医学講座 8月の出来事


先日、森永助教の帰国、川元技師の病院長表彰、松本技師の大学院入学を祝う会が開催されました。
リサーチカンファメンバーでの懇親会


森永芳智 助教が約2年間の海外留学を終え、8月より検査部に帰ってきました。
森永助教はアメリカのミシガン大学で、主に腸内細菌叢の変化を中心に重症感染症の病態についての研究を行っていたとのことです。留学で得た経験や知識を活かして、当教室でも指導をしていただきたいとおもっています。


また、川元技師が、学会等の発表に係る病院長表彰の受賞者に選ばれました。授賞式では、「TNF-αはアポトーシスを誘導することでLegionella pneumophilaの騎乗同妃細胞内での増殖を抑制する」というタイトルで発表しました(論文の内容は→リンク

病院長表彰受賞式(右から2番目 川元技師)
栁原教授と川元技師
 

さらに、松本技師が、試験に合格し、10月より社会人大学院生としても研究を行っていくことになりました。松本技師は、造血器腫瘍関係の研究を行っていく予定です。

長崎大学病院検査部は、様々なキャリアを背景にした医師および臨床検査技師が在籍しています。臨床だけでなく、基礎研究も積極的に行っていますので、興味がある方は御連絡ください!

2017年9月6日水曜日

第9回長崎臨床検査Reversed-CPC(R-CPC)研究会

 8月5日(土)に、長崎大学医学部ポンペ会館で第9回長崎臨床検査Reversed-CPC(R-CPC)研究会を開催しました。






 R-CPCの1症例目の担当は長崎原爆病院の酒井技師で、血球貪食症候群の症例でした。また、2症例目は長崎大学病院の海端技師が担当で、壊死性筋膜炎の症例でした。どちらの症例も、それぞれの班で積極的に話し合いが行われていました。また、日常検査で目にするデータをしっかりと解釈することの重要性を再認識できたのではないかと思います。



 特別講演は、大分大学医学部循環器内科・臨床検査診断学講座教授 髙橋 尚彦先生をお招きし、「危険な心電図の読み方」というタイトルでお話をしていただきました。心電図の読み方の基本から解説していただき、循環器を専門としない人にも大変分かりやすく、また日常臨床でも活用できる素晴らしい御講演でした。



 次回開催については、詳細が決まりましたら検査部のホームページやFacebookでお知らせいたしますので、是非ご参加ください。
 初めての方や研修医・学生も大歓迎です。参加の連絡は不要ですので、お気軽にお越しください。

これまでのR-CPCの報告は→リンク



2017年9月5日火曜日

Elecsys HTLV-I/II・J Clin Microbiol(original article)




Laperche S, Sauleda S et al. Evaluation of sensitivity and specificity performance of Elecsys HTLV-I/II assay in a multicenter study in Europe and JapanJ Clin Microbil 55 (7): 2180-7, 2017.






 当教室の栁原 克紀 教授および宇野 直輝 助教が共著者となっているHTLV-I/IIの新規検査試薬についての論文が、アメリカ微生物学会(American Society for Microbiology)が発行するJournal of Clinical Microbiology誌に掲載されました(2017年7月付)。

 本研究では、全自動免疫測定装置の専用試薬として新たに開発されたHTLV-1/2抗体測定試薬についての検討を行いました。検討した試薬は、電気化学発光免疫測定法を測定原理とするダブル抗原サンドイッチ法を用いた第3世代の試薬です。本研究では、オーストリア、フランス、ドイツ、日本、ポルトガル、スペインの6カ国7施設(ドイツのみ2施設)の多施設共同研究として行われ、既存の方法と比較しても、感度・特異度ともに良好な結果でした。

 当教室では、基礎的な研究だけでなく、多数の臨床研究を行っています。今回のような国際的な多施設共同研究も積極的に行っていきたいと考えています。


これまでにブログで紹介した論文一覧はこちら→リンク

2017年9月4日月曜日

新規βラクタマーゼ阻害薬(OP0595)・Antimicrob Agents Chemother(original article)






Kaku N, Kosai K, et al. Efficacy and pharmacokinetics of OP0595 and cefepime in amouse model of pneumonia caused by extended-spectrum-beta-lactamase-producing Klebsiella pneumoniae. Antimicrob Agents Chemother. 61 (7): e00828-17, 2017.






 当教室の賀来 敬仁 助教の新規βラクタマーゼ阻害薬についての論文が、アメリカ微生物学会(American Society for Microbiology)が発行するAntimicrobial Agents and Chemotherapy誌に掲載されました(2017年6月28日付)。

 ESBL産生菌は、我が国でも大腸菌や今回の検討で使用した肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)で増加傾向にあります。院内感染だけでなく、市中においても拡大が懸念されている薬剤耐性菌です。ESBLの治療には、タゾバクタム・ピペラシリンやカルバペネム系抗菌薬が使用されますが、当教室の以前の検討では菌量が多い状況ではタゾバクタム・ピペラシリンの有効性が認められなくなるinoculum effectが確認されています(Harada Y, Morinaga Y, et al. Clin Microbiol Infect)。そのため、治療の選択肢としてカルバペネム系抗菌薬しかない状況もあります。しかし、カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)の出現が問題となっているため、他に使用可能な新薬の登場が待たれています。

 今回の研究で使用したOP0595は、日本のMeiji Seikaファルマが開発した新規βラクタマーゼ阻害薬で、これまでに実験株および臨床分離株を用いた検討で、セフェピムを始めとする種々の抗菌薬との組み合わせでESBL産生菌などの薬剤耐性菌に対して有効性を示してきた薬剤です。本研究では、inoculum effectを確認したESBL産生K. pneumoniaeによる肺炎マウスモデルに対するOP0595とセフェピムの併用療法の有効性と体内動態を確認しました。検討の結果、OP0595単剤、セフェピム単剤では死亡率、肺内生菌数ともに改善を認めませんでしたが、OP0595とセフェピムを併用することで、死亡率、肺内生菌数がともに有意に改善しました。今後、新薬としてOP0595が出てくれば、ESBL産生菌にに対する治療の新たな選択肢となる可能性があります。

 当教室では、医師および臨床検査技師の大学院生が、栁原教授森永助教小佐井助教賀来助教の指導のもと、感染症マウスモデルを用いた抗菌薬の研究を行っています。研究に興味のある方は、いつでもお問い合わせください

これまでにブログで紹介した論文一覧はこちら→リンク

2017年9月1日金曜日

研修医&クリクラ(7月、8月)

 9月1日になり、小学生〜高校生は新学期が始まったのではないでしょうか。長崎大学も、来週からポリクリが再開となるため、検査部も賑やかになります。

 さて、検査部ブログも1ヶ月ほど夏休みをいただいていましたが、今日から再開していきます。第一弾は、研修医&クリクラの報告です。

 7月〜8月上旬まで初期研修医(1年目)の岩田先生が当科をローテートしました。また、医学部6年の高木君、迎君がクリニカル・クラークシップで7月の1ヶ月間検査部で実習を行いました。岩田先生は、サテライト検査室、遺伝子検査室、微生物検査室、生理機能検査室をそれぞれ1週間ずつローテートし、高木君と迎君はサテライト検査室、微生物検査室、輸血部、生理機能検査室などをローテートしました。3人ともさまざまな手技に触れ、有意義な研修になったようです。また、今回も月、水、木、金の週4日はミニR-CPC(データから病態を読み解くトレーニング)を教官と行い、検査データの捉え方や考え方について学習しました。
 検査部での経験を生かして、これからの研修生活および国家試験の勉強を頑張ってください。





当教室では、研修医や学生の実習にも力を入れています。興味のある人は気軽にたずねてください。
以下、リンクです。
検査部ホームページ(学生教育)
検査部ホームページ(初期研修)
検査部ホームページ(後期研修)

これまでの初期研修の記事は→リンク
クリクラは→リンク