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2016年9月27日火曜日

新規抗MRSA薬TZDの効果・Int J Med Microbiol (original article)


Kaku N, Morinaga Y, et al. Antimicrobial and immunomodulatory effect of tedizolid against methicillin-resistant Staphylococcus aureus in a murine model of hematogenous pulmonary infection. Int J Med  Microbiol. 306. 421-8, 2016(リンク).



 当教室の賀来敬仁助教のtedizolidのMRSA血行性肺感染マウスモデルにおける有効性についての論文がInternational Journal of Medical Microbiology誌に掲載されました(2016年9月付)。テディゾリド(Tedizolid, TZD)はオキサゾリジノン系の新規抗菌薬であり、アメリカおよびヨーロッパでは皮膚軟部組織感染症に対する治療薬として経口薬および注射薬が承認されたばかりの薬剤で、日本でも第Ⅲ相臨床試験が実施されています。

 本研究では、長崎大学病院検査部で以前から研究しているMRSA血行性肺感染マウスモデルを用いて、TZDが肺感染症でも有効か検討しました。MRSA肺感染症で主に用いられるバンコマイシン(VCM)と比較したところ、TZDはVCMよりも有意に生存率、生菌数を改善しました。また、LZDとの比較においては、生存率・生菌数での非劣性を示しました。本研究でのLZDの投与量が120mg✕2回/日投与であったのに対して、TZDが20mg✕1回/日投与と、投与量がかなり少ない状況でも非劣性であったことから、MRSA肺感染症の治療薬としては有用な薬剤になると考えられます。
 また、同じオキサゾリジノン系抗菌薬であるLZDでは、抗菌作用以外にも免疫調整作用があることが報告されており、賀来助教も以前報告しています(Kaku, et al. Antimicrobial Agents and Chemother, 2014)。本研究ではTZDがLZDと同じように血中の炎症性サイトカインを減少させたことが分かり、免疫調節作用についても期待ができそうです。

 当教室では、栁原教授小佐井助教賀来助教を中心に、臨床分離株、気道上皮細胞、感染症マウスモデルなどを用いて感染症の病態解明や抗菌薬の効果について研究しています。研究に興味のある方は、お問い合わせください


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